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マギレコ裏主人公・保澄雫の謎(2)

※この記事はネタバレを含みます

 アナザーストーリー5章に保澄雫はやはり登場しなかった。
 が、その内容はメイン5章のラストと合わせメインストーリーのテーマをいよいよ本格的に言語化し始めたもので、いてもたってもいられなくなったので記事を書くことにした。
 保澄雫が「裏主人公」である所以は、メインキャラに体現されるテーマやキーワードと切っても切り離せないからである。


 そのキーワードは「家族」「孤独」「居場所」。特に「居場所」だ。
 そして雫はこれらのポイントにおいて、「いろはの裏、ほむらの対」とでも言うべきテーマを背負ったキャラ造形になっている。
 雫がメイン5人(いろは組)の「6人目」になりかけたのも、絡むキャラが各作品の主人公勢ばかりなのも、このことを考えればかなり自然と納得できる。
 まずは雫以外も含めたメインキャラ間の関係性の比較から入っていきたい。

 

①「まどか-ほむら」再話としての「いろは-さな」

 アナザー5章でほむら(※メガほむ)自身の口から語られている。
 ほむらはまどかと出会う前の自分をさなに重ねている。この世界に「居場所」がなく孤独に苦しんでいるさなに大切に想える人ができれば、自分がまどかに救われたようにさなも救われるかもしれない、と。
 さなを救った「大切な人」は言うまでもなくいろはである。メイン5章ラストに描かれている通り、当初のさなはいろは以外に心を開いていなかった。それがマグカップをきっかけに擬似家族としての繋がりを強めていき、最終的にいろは魔法少女ストーリー3話に見られるような極めて強い5人の「絆」で結ばれる。
 新旧主人公で再話をやっているわけだが、いろはがまどかと大きく違う点もある。いろははさなを「孤独」から救い、さなは「居場所」を見つけることができた。だが、「救う」側であるいろはもまた、七海家に住むようになるまで自分の「居場所」を見つけることができず悩んでいたのだ。
 これはいろはだけでなく七海家全員に共通する傾向だが、背景に「喪失」を抱えている。やちよ以外の全員が家族を失っているか家族に深刻な問題を抱えているのだ。いろはは妹を失っており両親からは放置、鶴乃は母方がろくでもなくフェリシアは両親が死亡、さなは家族からのけ者にされている。家族については描写のないやちよも親友を失っている(死んではいなかったが)上、一人だけ真実を知りながら隠しており、溜めこんでいるものが多い。
 そういう5人の「居場所」なので、結果として「共依存に半歩突っ込んだ擬似家族」になる。擬似家族といえばアザレアもそうだが、当初のアザレア(ほぼこのは一人が原因だが……)と違い、外に対して閉じられた関係性ではない。ももこ組やまどほむとの交流もあるし、知り合ったばかりの雫を「6人目」に迎えようとしていた。この擬似家族の様子はメイン5章からかなり時間が経過したいろはストーリー3話と、恐らくそこからさらにかなり経っている雫ストーリー2話3話に詳しい。
 「外に対し開いている」ことと「一日離れ離れになっただけでつらくなるほど内の繋がりが強い」ことが両立しているのがいろは組の特徴である。まどか→ほむらの感情やほむら→まどかの感情とはまた違った様相を呈しており、単に原作をなぞっているだけではない。メガほむはともかく覚悟決まってからのほむらとさなは殆ど重ならないし。

 

②「まどか-ほむら」「いろは-さな」と「まどか-雫」「いろは-雫」の対照
 「居場所」はメイン・アナザー5章のキーワードであると同時に、雫が魔法少女ストーリーやボイスで何度も口にする彼女にとってのキーワードでもある。
 「孤独」を抱えている点も、「居場所」を探している点もほむらやさなと共通している。そしてまどか魔法少女ストーリーではほむらを救ったまどかに、雫の魔法少女ストーリーではさなを救ったいろはに手を差し伸べられた。
 苦戦しながら一人で魔女と戦う雫にまどかがかけた言葉は、本編で孤独に戦っていたほむらへの言葉と被る。怪しい仕事に手を貸す雫の「居場所探し」に理解を示し、雫を七海家に招こうと提案したのはいろはである。このキャラ配置は単なる偶然ではない。
 だが雫がまどかやいろはに「救われる」ことはなかった。まどかや七海家との交流の中で「居場所」のヒントを掴みつつ、最終的に自ら孤独を選んでいるのだ。
 雫というキャラの特徴はここにある。もともと雫はほむらやさなと違い、友達が普通にいて家族にも大きな問題はない。客観的には恵まれた立場であり、本人にもその自覚がある。にも関わらずふとした拍子に俯瞰してしまうため、自分の立っているべき場所が見つからない。そして「将来の自分を見出せない」「自分の足元が頼りない」という感覚が常に付き纏う。エモい。
 このあたりは雫の魔法少女ストーリー1話に詳しい。理想が高すぎるとも言えるし、理想を持たないとも言える。本質的に社会性がない。だから揺るぎない地面を探しているにも関わらず、結果として誰にも属さない。しっくりくるのは同じことを感じているふーにいの隣だけだった。そして「喪失」が刻まれる。大きな問題はないが「(外泊しても帰らなくても)何も言われなくなった」、という親との距離感もそれらしい。
 似たような傾向は七海家入りする前のいろはにもあった。「居場所」というワードへの反応といい、いろはが雫に過去の自分を重ねていた可能性もあるだろう。雫はまどかの考え方や七海家のあり方を否定はせず、むしろ「居場所」を見つけるヒントを得た。だが合流はしなかった。七海家は「5つのピースでもう絵は完成している」から、半ばいろはたちの気持ちを裏切る形で出て行った。
 まどか・いろはとの関係でほむら・さなと対になっているだけでなく、いろはの「裏」となるテーマを雫が背負っている所以はこのあたりだ。雫と同じ「居場所探し」というテーマを背負ったいろはやさなの見つけた「擬似家族の絆」は、雫にとっての「居場所」になり得なかった。共依存的な関係が雫には「合わなかった」、と言い換えてもいい。
 ある「救い」で「孤独から救われる」人もいれば、「救われない」ではなく「救いにならない」人もいる。ここで模索されているのは「救い」の相対化でもあり、「救い」と同時並行の異なるアプローチである。では主人公チームを出て行った雫の「居場所」探しは最終的にどうなるのか。これがいろはの背負ったテーマの「裏」だ。
 ちなみにいろは・さな・雫は全員、数少ないマミさん系オサレマギアネーム持ちである。

 

③ほむらの対としての雫のキャラ造形

 雫がほむらと対になっているのはまどかとの関係だけではない。
 保澄雫というキャラはそもそも暁美ほむらの「対」となる要素が極めて多く、最初から「ほむらの対」を意識してキャラクター造形されているとしか思えないのだ。
 一つ一つ挙げると、

(1)属性
 ほむらは闇で雫は光。相対的に些細なことだが一応。
(2)固有能力の性質
 ほむらの時間操作は「時間」を、雫の空間結合は「空間」を跳躍する。
 世界を縦に広げるか、横に広げるかの違いでもある。
 また、いずれの固有能力もキュウべぇと契約する際の願いの内容で決まっている。
 なお、固有能力が明言されたマギレコオリジナルの魔法少女は決して多くない(他にストーリーに組み込まれているのはレナの変身能力やななかの敵を知る能力くらい)。
(3)大切な人の死について
 二人がキュウべぇと契約したのはいずれも「大切な人の死に臨んで」という状況。
 ほむらが大切な人(まどか)の死という事実を覆すために何度も時を渡るのに対し、雫は大切な人(ふーにい)の死に目に会うことができただけで、大切な人の死という事実は確定している(そしてそれを後悔してもいる)。大切な人を助けようとしている者と、大切な人を助けられなかった者。
(4)他者との関係性の作り方
 ほむらの他者との関係性は常にまどかが軸になっており、最後はまどか一人に集約される。まどかを助けるためだけに何度も時間を渡り、自分の世界を縦に(=時間的に)広げていく。それに対して雫は大切な人を失ったことが確定しており、行動の軸となる他者との関係性を持たない。居場所を探して各作品のメインキャラと関わるが、結局誰にも属さない。だが、その過程で自分の世界を横に(=空間的に)広げていく。

 このうち、特に重要なのは(4)である。
 織莉子の魔法少女ストーリーでは(おそらく)雫が見滝原と神浜を空間的に繋いでおり、おりこ組と原作組の間に立って二者を繋ぐ存在にもなっていた。
 要するに、保澄雫は「繋げる」存在なのだ。コネクト名である「私が繋げるから」にそれが最もわかりやすく現れている。空間を繋げることで横の関係性も繋ぐ。誰にも属さないからこそ異なる集団を「繋ぐ」ことができる。
 「横の繋がり」はこのゲームで最も力の入ったポイントであり、一番の魅力といってもいい。様々なキャラの魔法少女ストーリーをやればやるほど、想像を超えた関係性の多様さが見えてくる。この意味ではかこや衣美里もほぼ裏主人公である。
 原作ともメインストーリーとも異なるアプローチをしているのが魔法少女ストーリーで、その魔法少女ストーリーの性質を代表するような能力を持ち、ほむらと対のキャラとして造形されているのが保澄雫なのだ。

 

 そういうわけで、保澄雫はマギレコの裏主人公である。
 結局何がどう裏主人公なのかあんまり明確に説明できなかったが、まぁ2割くらい与太なのでフィーリングでわかってほしい。触れ忘れていたが、うめ絵でないので非メインと見せかけてキャラデザとイラストがササギコウシなのもキーキャラだと思う理由の一つである。
 私の展開予想はだいたい外れるので、メインにもアナザーにも雫の登場はなく徹底的に魔法少女ストーリーだけで今後の掘り下げをやる可能性も否定はできない。期間限定イベントオンリーとかは流石にやめてほしいし無いと信じてる。
 というわけで、もっと原作や関連作品に詳しい人が私より細かい考察をしてくれると喜びます。
 とりあえず2-5-2虚無周回をしながら6章をゆっくり待とう。

 

 なお、雫のベストパートナーは杏子だと思う。
 おりこ組の魔法少女ストーリーでの雫は出番こそ少ないが、やけに頭の回転が速く頼りになる(それ故に織莉子に誘導されてもいるが)。そして杏子とはお互い信頼し合ったアトモスフィアを醸し出していた。ある意味他人に冷淡な雫が杏子のために奔走するのも新鮮な印象を受ける。
 ふーにいとの関係もそうだが、一匹狼気質同士でいるのが結局一番落ち着くのだろう。「一匹狼になろうとして一匹狼になりきれない杏子と、一匹狼をやめようとして一匹狼に戻ってしまう雫」と考えるとこのコンビはかなり熱い。